子育てし大県“さが”

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子育てし大県“さが”



佐賀県知事xヨッピーさん(ライター)が対談!「育児って、山登りと一緒じゃないですか!?」

2023年3月30日 イベント

こんにちは。ヨッピーです。今日は大好きな佐賀県に来ています。  
佐賀に住んでいる友達の子育ての様子がいつも楽しそうなので、
佐賀県の取り組みとか伺えればなと思い、知事の取材に来ました。
お久しぶり!ヨッピーにも子どもが産まれたんだって?
いやそうなんですよ。 これ、「トントントントンひげじいさん」をやってる息子なんですけど可愛くて可愛くて……。
いいね。育児は楽しい?
楽しいし、尊さがすごいですね。 何してても可愛いので。 ギャン泣きしてても可愛い。 知事も育休取ったんですよね?
でも1番目の子と2番目の子の時は取れなかったんだよ。1人目の時は「子どもが産まれたぞ!」って聞いて、大喜びで病院に行って写真を撮ってたら電話がかかってきて、当時は総務省の職員だったんだけど、「国会で質問が出たからすぐ帰ってください」って言われて深夜にタクシーに乗って職場に戻ったんだよね。 子どもが産まれてすぐだよ?どう思う?
いや僕、男性については「社会から育児をする権利を奪われてきた」っていう側面が少なからずあると思いますよ。
仕事だなんだで育児したくてもやれなかった人達がたくさんいるはずで。
そうそう。それで3番目の子の時は育休を取ったんだよね。 17年前かな。帝王切開での出産だったから奥さんは10日近く入院しないといけない。 じゃあ「その間当時4歳と3歳の上の子たちの面倒は誰が見るの?」ってなるよね。 総務省から鳥取県庁に出向してたから、近くに親戚もいないし、自分が見るしか無いじゃないかと。 当時は部長だったんだけど、「育休取る」って言ったら「お前何しに鳥取に来てるんだ。仕事しろよ」みたいな雰囲気があってね。
おー、よくそれで取れましたね。
周りの雰囲気はそんなだったんだけど、当時の片山知事が「それはいいことだ」と言ってくれてね。 片山知事は子どもが6人居るんだけど、自分の時に周りから「お前が産むわけじゃないだろ」って育休取れなかったことが強く心に残っていたらしくて。
じゃあその片山知事も「子育てする権利」を奪われてた人だったわけですね。
そうだね。そのおかげで2週間の育休を取ることができた。議会にも報告したから議事録がまだ残ってると思う。そこから空気がすごく変わったんだよね。なにせ知事が「いいことだ」って言ってくれたし、部長だった僕が育休取ったんだから課長とか係長は育休を認めやすくなるよね。結局、誰かが育休取るのを止めてたんだよ。止めてないにしても、「お前、仕事しろよ」っていう無言の圧力があった。それが良くなかった。
だから、知事になってから佐賀県では育休取る時に申請するんじゃなくて、逆に育休を取らない時に申請を出すようにルールを変えたんだよ。「子どもが産まれましたが、私は育休を取らずに働きますが、よいでしょうか?」っていうね。
おー。それはめっちゃ効果ありそうですね。実際取得率あがりました?
今、県庁の男性の育休取得率何パーセントだっけ?え?100%? それはそれでなんかちょっと気持ち悪いね。強制してるみたいで(笑)
いや、それで育児の楽しさみたいな事を少しでも知るのは男性にとってもすごく良い事だと思うんですよ。僕、共働きなんで僕が家で子ども見てる間に奥さんが外に出てて、「初めてハイハイした」とか「初めてつかまり立ちした」とかそういうタイミングを奥さんはいくつか見逃してめっちゃ悔しがってましたもん。少し前の時代まで、男性はみんなそういう姿を見てこなかったわけでしょう。知事が育休取った時はどんな感じでした?
いや目からウロコだったよ。「こんなに大変なんだ!」って。朝起こすところからはじまって、ご飯食べさせてお着替えして幼稚園のバス停まで送ってさ。送り出したら片付けして掃除して洗濯して、今日のご飯はどうしようとか。どんどんタスクが積もってくから頭の中が大混乱(笑)お弁当のソーセージもタコさんにしてあげたかったけど僕には無理だった(笑)
僕はけっこう割り切ってますね。「とりあえず子どもが元気に楽しく過ごしてたら多少家が散らかっててもいいや」って。
手の抜きどころをどうするかはポイントだよね。あと育休中でもどうしてもやらなきゃいけない仕事が出て来るんだよね。「部長に来て頂かないと困ります」とか言われて。夜の会合にどうしても顔出さなきゃいけなくなった時は、仕方ないから子どもを連れて行ったもん。
あー、いいですね。僕もよく取材先に子ども連れて行きますよ(笑)
そしたら、その時に来てた浦安商工会議所(千葉県)の会頭さんが女性で、すごく感動してくれてね、「鳥取県の部長は子ども連れて仕事してるの!?」って。すごい褒めてもらった。だから当時は色々反響がすごかったね。奥さんにも「1人目2人目の時は全部任せちゃってごめん」って謝ったし。奥さんには「2週間くらいで育児した気にならないでね」って言われたけど(笑)
それはごもっとも。
1人でも大変なのに2人目の時は地獄だったらしいから。だから、知事になった時に「子育てを辛いものではなく、楽しいものにしたい」って思った。子育ては大変?
いや大変な部分はありますよもちろん。ただ、僕は「育児って山登りと一緒だな」って思ってるんですよ。山登りって、色々調べて、装備を揃えて、準備万端で挑めば「景色が綺麗だな~」とか「登ったぞ~!」っていう達成感を得る余裕も生まれるけど、なんの準備もしなかったら寒いわお腹が空くわ足が痛いわで景色が綺麗とか言ってる場合じゃなくなるじゃないですか。 それに、「山に登る」って、興味無い人からしたらちょっと意味がわからないじゃないですか。「なんでわざわざ大変な思いをしに行くの?」とか「お金も時間もかかるでしょ?」とか。でも山に登らなきゃ見れない景色とか達成感って絶対あるんですよ。子育てもそうじゃないですか。やってみないと得られない体験とか達成感がある。だから「同じだな~」って。
それは確かにそうだね。登山も良い体験をしたら「また登ろうか」って思えるもんね。じゃあ相当準備してから育児した?佐賀県では「マイナス1歳からのイクカジ」を提唱してるんだけど。出産前から夫婦で子育ての準備しようっていう。沐浴とかオムツ替える練習とか。
あ、まさにそれです。産まれる前から育児本10冊くらい全部読みましたし、育児に専念するために仕事を調整したり便利な家電を揃えてとにかく家事を減らしたり。あとは運動も。先輩パパに「体力は大事だぞ~」とか言われたから「体力つけとこう」と思って、家事を圧縮して空いた時間に毎日有酸素運動と筋トレ(笑)
佐賀県が出してる父子手帳には、パパが家事や育児を楽しむコツを紹介してるんだけど、さすがに運動のことまでは書いてなかったな(笑)でもそうやって先輩からのアドバイスを貰えるのは良いよね。佐賀県はフィンランドと提携しているんだけど、フィンランドには「ネウボラ」っていう制度があって、産前から担当の保健師さんがついて定期的に面談したり、困りごとを一緒に解決してくれる。これをそのまま取り入れると流石にコストがかかりすぎるから、育児アプリの「mamari」と提携して、アプリ上で誰でも簡単に相談できるような仕組みを作ってるんだよね。
あ、良いですね。僕も「誰かに気軽に聞ける環境があると便利だな~」と思ったのでLINEの子育てオープンチャット作ったんですよ。今900人くらい入ってて、「このベビーカー使ってる人、使い心地はどんな感じですか~?」「ちょっと重いけど荷物たくさん入るから良いですよ~」みたいなやりとりが活発に行われてます。
今日はね、実際に育休を取った職員2人に来て貰ってるのでちょっと話を聞いてみよう。

加藤さん(育休取得日数:2ヵ月)
さっき言ってたみたいに、子どもが初めて腹ばいになったとかそういう姿をその場でリアルタイムに見れたのは良かったですね。子どもの具合が悪い時に一緒に頑張れたりとか。

納富さん(育休取得日数:1ヵ月)
同じく子どもの様子を1日通して見れたのは良かったです。夜に「今日はどうだった?」って聞くだけだと主体的には見れなかったかもしれない。
奥さんとの関係も良くなるよね。
これ、父子手帳に載せてる愛情曲線ってグラフ。女性から男性への愛情って、結婚してすぐの頃は「あなたのこと大好き!」ってなってるんだけど、子どもが産まれたらグワッと子どもへの愛情が増えて、夫に対してはガクンと下がる(笑)でも、ここでちゃんと育児して奥さんからの信頼を勝ち取っていたら、だんだん戻ってくるんだよね。逆に言えば、奥さんからの信頼をここで勝ち取っておかないと「もう、あなたいらないわ」ってなって熟年離婚が待ってるかもしれない。ヨッピーの家の役割分担はどうしてるの?
朝は僕が担当なので、朝7時半に起きて子どもを起こしてご飯を食べさせて、保育園の準備しつつ食洗機と洗濯機まわして、9時に保育園連れてってあとは仕事って感じですね。お迎えは奥さんが担当なんですけどそこから先は特に分担とか決めてないです。晩御飯は僕が作ったり奥さんが作ったり。お風呂も同じ感じで。ただ飲みに行くのはお互い好きなので「来週ここ飲みに行くね~」って言って片方はワンオペで対応するっていう。僕のほうが飲みに行く頻度は多いけど(笑)お二人はどんな感じで?
育休明けは主に夜と休日の家事・育児を私が担当してますね。ご飯作ったり洗濯したり掃除したり。
うちは特に役割分担が無いですね。なんでも二人でやる感じです。子どもの話しながら洗濯物を一緒に干してる時間とかに「幸せだなぁ」って思います。
ちなみにお二人が育休取る時に職場の理解はどうでした?2カ月と1ヵ月取られたんですよね?
すごくスムーズでしたよ。「子どもが産まれます」って言ったら「じゃあ育休はいつからいつまで?」って。
佐賀では育休取るのがデフォルトだからね。
育休を取る時に、上司からメッセージカードを頂いたんですよ。「職場の事はみんなに任せて、育児に専念してください!」って。それは嬉しかったです。
県庁だけじゃなくこういうのはもっと企業にも広がって欲しいよね。納富さんはどう?
職場の理解は問題ないのですが、ちょっと困ったことが。我が家は外食が好きなんですが、1歳の子がバタバタして、2人の子どもをお店に連れて行くと、それが気になって楽しめないんですよ。
大人数でいくってパターンありますよ。キッズスペースがある居酒屋とかに大人数で行って、そこにしれっと子ども連れて行くんですよ。そしたらみんなが順番で見てくれるから、僕はあまり見なくて済むっていうのはありますね。
気にしちゃうんですよね…
気にしなくていいんじゃないですか。「俺のかわいい子どもをお前に面倒見させてやる」くらいの(笑)
たぶん、友達に迷惑かけちゃいけないって意識があるから、楽しめないんだと思う。いや迷惑かかって当然でしょって開き直ればいいんですよ。僕結構開き直ってますよ。自分に子どもが産まれる前から子連れの友達と一緒にあちこち遊びに行ったりしてたし、その時は僕がお前の子どもの面倒見てたんだからお互い様じゃん?的な。

あとはお店選びで、お座敷のある近所の居酒屋さんに奥さんと子どもと一緒に行くんですけど、同じような子連れの家族が結構来てるんです。だから、子どもがハイハイしながらよそのテーブルに行って、その子がやってるゲームをじっと見てたりね。お互い様じゃないでしょうか。
この前、他県から佐賀に移住してきた人が言ってたんだけど、「移住前は白い目で見られるからラーメン屋に子ども連れていけなかった。でも佐賀だと子どもが泣いても騒いでも文句言われないから、ラーメン屋に連れて行ける」ってさ。佐賀県はそんなお店多いよね。
さっきのメッセージカードの話といい、いい県でしょ。佐賀県庁はちょっと変わってて、各都道府県の県庁の中で中途採用がダントツで多いんだよ。普通の県の4倍以上はいる。だからこそ柔軟な部分があるんだよね。
あ、本当にたまたまなんですけど、民間経験者採用で佐賀県庁に入った、大学の同級生が居るんですよ。僕、大学に友達少なくて3人しかいなかったんですけど、そのうちの1人。「今度知事に会いに県庁行くよ~」って言ったら「見に行くわ~」って言ってて、今そこに立ってる(笑)彼も混ざって良いのかな。 SNSではずっと繋がってたんですけど、民間企業で働いてた時はあんまり更新してなかったのに佐賀に来てから「美味しいお店見つけた」とか「娘とタケノコ掘りに来た」とかやたらと更新するようになったよね。「満喫してるな~」って思ってて。

松井さん(2022年4月民間経験者採用で入庁)
佐賀の子育てはどう?
僕は海外での単身赴任での勤務が長かったので、ほとんど子どもと一緒に居る時間が取れなくて。海外から帰ってすぐの時って娘が僕に対してちょっと人見知りするんですよ。それで「慣れてきたかな~」ぐらいのタイミングでまた海外に戻らなきゃいけなくてずっとその繰り返しだったんですね。今はそれをなんとか取り戻そうと頑張ってます。
子どもの態度は変わった?
今はもうなついてくれてて、「パパ今週はどこ行く?」みたいな。
子どもの親に対する信頼感って、子どもの頃にどれだけ同じ景色を見て、同じ体験をしてきたかに比例する気がするよね。
僕は自分の父親と一緒に遊んだ記憶がたくさんあるので、自分の子どもともできるだけ一緒に遊びたいなって強く思ってますね!だから海外に居た時はもどかしくて。
子どもが小さい時期なんてあっという間なんだから本当にもったいないよね。準備不足で楽しめないのももったいない。マイナス1歳からのイクカジも含めて、準備して挑めばもう少し楽しむ余裕もでてくると思うよ。
海外勤務中に外国の人の子育てを目にする機会もけっこうあったんですけど、海外だともう少し多様性があって、マンパワーでどうにかするんじゃなくて家事サービスとかをすごく効率的に使いながらこなしている人が多いな、っていうのがひとつと、あとは男性が専業主夫で女性がバリバリ稼いでるっていうスタイルの家庭もありました。日本だとまだまだ少ないですけど。
それぞれの家庭に合ったスタイルで、どうしたら一番力が発揮できるのか、っていう視点がもう少し必要な気がします。
日本だと男が外で稼いで女性が家事育児っていうパターンが、まだまだ多いからだよね。そこの公園は、夏は噴水が噴き出すんだけど、最近は一緒に来ているお父さんが増えたよね。子どもと一緒にビショ濡れになって。だから段々と変わってはきてるんだよね。
 
佐賀にはこういう広い公園もたくさんあるし、自然も近いし、歴史もあるし、色んな体験が出来る環境があるんだよね。それでさっき言ったような「マイナス1歳からのイクカジ」とかmamariとの提携なんかの取組みも含めて「佐賀で子育てしたい」と思って貰えるような環境を整えてきているから、佐賀でのびのびと子育てを楽しんで欲しいな。
 
ほんと、子ども達が楽しそうに元気いっぱい走り回ってる姿は良いよね。多少ケガしたってそれも経験だからさ。
仕込んだみたいにタイミングよく子ども達が現れましたね。
仕込んでない!仕込んでないよ!(笑)
佐賀県版パパのための育休ガイドブック(SAGA PAPA POCKETBOOK 02)
令和4年10月、育児休業に「産後パパ育休」の制度が加わるなど、男性の育児休業が取得しやすくなりました。佐賀県では、市町の母子保健窓口と医療機関(産婦人科・産科・婦人科)で、男性の育児休業取得の重要性やポイントをまとめたガイドブックを配布しています。妻の妊娠期(マイナス1歳期)や産後期は「心身の変化を実感する女性」と「そうでない男性」の間で、夫婦関係や家事育児の認識にギャップが生まれやすい時期と言われています。お子さんが生まれる前の準備として、このガイドブックを参考に夫婦で育児休業のとり方について考えてみましょう!
(電子版https://saga-kosodate.jp/upload/sagaks/files/ikukyu_booklet_2023.pdf
ヨッピー 1980年生まれ。一児の父。ライター。ライター以外にも、お出かけメディア「SPOT」の編集長や、講演、イベント主催などを行なう。子育てをしている親にゆっくりお風呂に入ってもらいたいという思いから託児銭湯も主催。著書に『明日クビになっても大丈夫!』(幻冬舎)がある。
Instagram https://www.instagram.com/yoppymodel/
Twitter https://twitter.com/yoppymodel

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