SEMINAR report SAGA末来デザインセミナー

SEMINAR report SAGA末来デザインセミナー

―仕事と子育ての両立”を語り合い、自分らしい未来を描く。ライフデザインセミナー開催―

仕事、結婚、子育て……学生にとっては未知の世界とも言えるライフイベントが訪れたとき、心から納得のいく選択をしてほしい! そんな思いで、佐賀県では若年世代を対象とした「SAGA 未来デザイン事業」に取り組んでいます。

その一環として、学生の皆さんにさまざまな価値観に触れながら将来について“自分ごと”として考えてもらう「ライフデザインセミナー」を開催しました。

当事者意識で社会変革!私たちの SAGA 未来デザイン

  • たくさんのワクワクとちょっぴり緊張感を含んだ空気の中、セミナーがスタート!
    第一部は、スリール株式会社 代表取締役・堀江敦子さんによる基調講演です。

    25 歳で起業し「子育てしながらキャリアアップする人材・組織を育成する」をテーマに人材育成事業を展開するほか、内閣府の男女共同参画専門委員、こども家庭庁の委員なども務めている堀江さんですが、子どもの頃はコンプレックスでいっぱいだったそう。

    「自分に価値をつけるには?」と考えるようになった堀江さんは、子どもが好きだったことから中学時代には保育園でのボランティアを経験。以降、高校・大学時代に 200 件以上ものベビーシッティング、国内外 30 以上の施設でのボランティア、インターンシップや短期留学など精力的に活動しました。

    「本当にいろんなことをやりました。でも“数をこなす”ことに意味はなかった気がします。
    一方、自分なりの目的を持ち、興味の対象を明確にして挑戦したことからは大きな学びがあったなあと、今は実感しているんです」

    学生たちは、堀江さんの経験談と自分の「今」を重ね合わせるように、深く考えるような様子で聞き入っていました。

  • 「自分が“やりたい”と感じたことを、その思いが熱いうちにやってみるのが大事。そして、間違いや失敗も成長の糧になります。目の前にレールが敷かれているのではなく、後ろを振り返った時に自分が大切にしてきた価値観がわかるんですよ

    熱く語る堀江さんの声が学生たちの胸にしっかり刻まれていることが、その表情から伝わってきました。

  • 講演後の意見交換タイムでは、マイクを向けられた学生がちょっと恥ずかしそうにしながらも笑顔でしっかりと、感じたことを言葉にしていきます。

    「堀江さんの行動力、すげ~!と思いました」と素直な感想を伝えた男性の学生に、堀江さんは「今日ここに来てくれた時点で、みんなにも行動力があるんだよ!」と言葉をかけられました。

    「これからも社会はどんどん変わっていきます。皆さんには“変える側”になってほしいです」と堀江さんが締めくくると、会場は大きな拍手に包まれました。

「Your Life インターンシップ」参加学生によるアイデアプレゼン

最初の緊張感をほどよく残しつつも、すっかりなごやかな空気に包まれた会場で、第 2 部が始まります。「Your Life インターンシップ」に参加した学生によるプレゼンテーションです。

「Your Life インターンシップ」とは、いわばインターンシップの“家庭版”。学生が共働きの家庭で一定時間を過ごし、育児や家事といった日常生活を体験するプログラムです。今回はプログラムに参加した3 組の大学生が「仕事と子育てを両立しやすい社会にするためにできること」というテーマで考えたアイデアを発表しました。

  • 1 組目は「チーム山口」の山口咲栄さん・山口茜さん。12 歳・9 歳・4 歳の子どもがいる家庭を体験する中でいろいろな気付きがあった中「子どもを預けること」に着目しました。

    「パパママが自分の時間を作りたい場合は、行政の一時保育や一時預かりを利用すると良いのだと思っていました。しかし現実は、預ける前の準備や手続きの手間がかかる、費用が負担になるといった理由でハードルが高いことがわかったんです。また、子どもを預けることに罪悪感を持っているパパママも少なくないと知りました」。

    パパママに“自分の時間”をプレゼントしたい! そんな思いで 2 人が考えたのが、土日祝の公民館を利用して学生ボランティアスタッフが一時預かりをするというアイデアです。

    パパママがリフレッシュできるのはもちろん、子どもたちが学生と触れ合うことで“ナナメの関係”を構築でき、地域全体での子育てにつなげられる。学生のチカラを地域に活かすことができる。子どもたちが学生に親しみ「自分もこんなふうになりたいな」と憧れを抱くようになれば、活動を次の世代に受け継ぐという持続可能性が高まるといった効果が期待できます。

  • このアイデアを考えながら「自分たちにもできることがたくさんあるんだ」と気付いた2人。
    「学生は無力じゃない」という言葉が、会場の多くの人たちの心に響き、共感を呼んでいました。

    受け入れ家庭の松永さんからは「以前は子どもを預けることに罪悪感がありましたが、2 人が遊んでくれたら子どもたちはとても喜んでいて。“誰かに頼る、預けるのも良いことなんだ!”と考えが変わりました。このアイデア、ぜひ実現してほしいです!」とのメッセージがあり、2 人は嬉しそうに受け止めていました。

  • 2 組目は 4 歳・6 歳の姉妹が暮らす家庭、4 歳の男の子がいる家庭で過ごした「YO☆SAY?」の小藤陽生さん。初めて子どもと関わることに不安があったそうですが「子どもが興味を持てそうなことを話しかければ、ちゃんと応えてくれるんだとわかったんです。やっぱり“伝える・聞く”のコミュニケーションが大事だと学びました」と話します。

    そして小藤さんは、子どもたちとアクティブに外遊びする中で「夏は公園の遊具に触れると 熱すぎて、子どもを安心して遊ばせられない」というリアルかつ切実な課題に気付きました。

    解決策は、遊具の周辺に樹木を植えて自然な日陰を生み出すこと。遊具の表面温度や周囲の気温が上がりすぎるのを防げば、火傷や熱中症のリスク低減になるだけでなく、子どもたちが自然に触れる機会になる、屋根などの建造物よりもメンテナンス費用を抑えられる、屋内の遊び場よりも低コストで子どもを健康的に遊ばせられるなど、たくさんのメリットがあります。

    「子どもたちのために、新たな遊びの可能性と自然の恵みを感じられる環境をつくっていきましょう!」と小藤さんは呼びかけました。

  • 発表を聞きながらウンウンとうなずいていた受け入れ家庭の⾧谷川さんは「暑いと公園に行くのも大変だけれど、昼間に外で遊ばせないと夜なかなか寝付かないから困っちゃうし」と心情を吐露。同じく受け入れ家庭の森永さんも「子どもはエネルギーが有り余っているから動きたくてたまらないんですよね。このアイデア、良いと思います」。
    そして 2 人が「大学生の優しいお兄ちゃんと触れ合えて、子どもにとって良い経験になりました」と口をそろえると小藤さんに笑顔がこぼれ、会場にあたたかな拍手が起こりました。

  • 3 組目は、共に 9 月生まれだという大宅梨央さん・前田花菜さんの「9 月 Twins」。
    2 歳と 0歳の女の子がいる家庭を体験してきました。

    体験に行くまでは「子どもたちに泣かれてしまうのでは」と心配していたそうですが「意外と人見知りはされなくて、たくさん一緒に遊んだり抱っこしたら寝てくれたりするほど距離を縮められて、楽しい時間を過ごしました」。

    その中で 2 人は、小さな子どもがいる共働き家庭を取り巻くさまざまな困りごとを知ります。
    オムツやミルクなどの日用品には意外とお金がかかる、待機児童問題は都市部だけでなく佐賀のような地方にもある、時短勤務には収入が減少するという不安がついてくる、子どもが寝てからも家事や翌日の保育園準備で親は忙しい……

    こうした問題を解消できる手立てはないのかと調べている中、行政の支援制度は存在するものの、その情報がなかなか子育て世代に行き届いていないことがわかりました。

  • 「届いていないのであれば、届ければいい。その方法が“Happiness トラック”です!」

    それって何? というワクワクの空気が生まれた会場に向かって 2 人が「パパママに情報やサービスを届け、行政や地域の人たちとの交流を生み出す移動式のコミュニティです」と続けると、会場から「おおー!」と感嘆の声が起こりました。

    トラックのある場所には誰もがいつでも気軽に立ち寄れる。パパママはいろいろな人とおしゃべりしてリフレッシュできるし、市町職員と直接話せるから何でも聞けて心強い。市町職員も当事者の生の声が聞けてどんどん業務改善に役立てられる。この場を利用しておもちゃのお譲り会などを開けば子どもたちも喜ぶし、モノを大切にする心が育まれる。
    みんなでウィンウィンの関係が築ける!

    受け入れ家庭の松崎さんは「まず 2 人が来てくれただけでとても助かりました。必要な情報が必要な人に行き届いていないことは私たちも実感していて。“自分から行く”のは少しハードルが高いから、トラックが“来てくれる”っていいですよね。そういう場があれば、忙しくても心にゆとりが持てそうです」と話しました。

  • 会場の学生たちは、一言も漏らすまいといった様子で終始熱心にメモを取っています。
    プレゼンが進むにつれて会場の熱気が高まり、今回インターンシップに参加していなかった学生の胸にも「次は自分が!」との思いが灯ったことが感じられました。

わたしたちの SAGA 未来デザイン~学生×市町職員×両立家庭~

いよいよ最後の第 3 部。学生・佐賀県内の市町職員・共働き家庭のパパママをごちゃまぜにしたチームに分かれて、妊娠期・育児期を疑似体験するボードゲーム「サンゴクエスト」を使い、子育・仕事・両立についてあれこれディスカッションしていきます。

妊娠、出産、子育て。学生たちはどれも経験のないことだからこそ、想像力をめいっぱい働かせて「もし自分がその立場になったら?」と考える時間です。

  • ディスカッションは大盛り上がり! 子育てを経験した方の体験談には、大人は共感しながら深く頷き、学生は初めて知る話に少しとまどう表情を見せながらも興味深そうに聞き入っていました。

    あるグループでは、男性の市町職員の妻が出産した時のエピソードで盛り上がっていました。「でも正直、自分が体験したわけではないから、出産直前の怖さや不安は未だにわからないところもあって……」と言うと、子育てを経験した女性が「陣痛が来るのは、もうすぐ赤ちゃんに会えるということだからとても嬉しいものですよ!」と話し、女性の学生は安心したような笑顔を浮かべました。

  • 他のグループでは、ある男性が「自分のひとことで妻を傷つけてしまったことが後からわかり、謝ったということがありまして」と告白。それぞれが自分の思いや経験を重ね、深く頷きます。

  • あちこちからときどきワッと笑い声があふれるほど、楽しみながら意見交換を重ねていきました。皆さんすっかり打ち解けた様子です!

  • ディスカッション後の発表タイムでも、いろいろな声が聞けました。
    男性の学生が「妊娠出産期の妻が夫に抱いた不満は一生忘れてもらえないものなんだということが、よくわかりました」と冗談っぽく言うと会場から笑いが。続けて「夫妻で大事なのは、きっちり 50/50でなくてもいいから分担を心がけ、得意なことを任せ合うことなんだと思います」と意見をまとめました。

  • 女性の学生は「貴重な体験をありがとうございます」と頭を下げた後「子育てを経験された方の生の声を聞き、両立を頑張っていることに感銘を受けたというか、感動していて。自分にはまだまだ先のことだと思っていましたが、自分ごととして考えていきたいです」と真っすぐな目で話しました。

  • 「仕事と家庭の両立に漠然とした不安を持っていましたが、体験した方のリアルな話を聞いてエールをいただき、意外とやっていけそうだと前向きに考えることができました。“手伝う”ではなく“主体的にやる”姿勢を大事にしていきたいです」と話した男性の学生もいました。

  • ディスカッションの集大成として、今の自分にできる小さな取り組みを「わたしのワンアクション」として各自 1 つ付箋に書き出しました。今日の時間を振り返りながら考え込む姿、何かを決めたようにペンを走らせる姿……そしてペンを置いたそれぞれの表情には、すがすがしさが感じられました。

プレゼン・ディスカッションを終えて

セミナーもそろそろ終盤。Your Life インターンシップに参加した学生に修了証が授与されました。

  • 「チーム山口」の 2 人は、体験を振り返って「仕事でも育児でも“対話”が大切だと感じました」「実はインターンシップへの参加を迷っていましたが、他ではできない出会いや経験が得られました。参加して本当に良かったです」と今の気持ちを述べました。

  • 「子育てに関して、視野が大きく広がる有意義な時間でした。自分のアイデアにフィードバックをもらえて嬉しかったです。もっとよく練り、実現したいと思います」と決意を語る小藤さん。

  • 「9 月 Twins」の 2 人が「Hapiness トラックについて、皆が行きたくなるような付加価値を増やすなど為になるアドバイスをたくさんいただきました。実現できたら、本当にすごく嬉しいです!」と話すと、会場からは労いと応援の気持ちがこもった拍手が送られました。

セミナーの時間内で伝えきれなかった応援の気持ちを文字に込め、3 組へ贈りました。

まとめ

10 年後、20 年後の自分が何をして、何を考えているかは、きっと誰にもわからない。だからこそ、想像力を働かせたり、いろいろな人の話を聞いたりして“疑似体験”し、⾧いスパンで将来像を描いてみることが大事なんだと感じました。

どんな世の中になっても、自分らしい人生を送るために、自分の手でライフデザインを描けるチカラを身に付けておきたいものです。今年度の「SAGA 未来デザイン事業」はこれでいったん一区切りですが、佐賀県が若い世代の皆さんのライフデザインを応援する取り組みはまだまだこれからも続きます!

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